リカールがやってきた | ANNEX・千夜一酒館

リカールがやってきた

 いよいよ、パスティス界の巨人「リカール」を口にすることができた。ネット通販で非常に安く販売されていたので、思い切って買ってみたのだ。

 「パスティス・ド・マルセイユ」とラベルに書かれているとおり、おフランス生まれの酒である。ペルノーはすでに飲んでいるが、「正真正銘のパスティス」リカールは初体験。

 キャップを開けると、濃厚なアニスの香り。琥珀色の液をグラスに注ぐと、その香りが一層鼻をつく。氷を入れると水分によって白濁。氷がすべて溶けると、油状の薬草成分が膜を張って浮かんでくる。

 アルコール度数45度。ストレートで味わえば、ハーブの濃厚な香りと強烈なアルコールが、いやがおうにも舌を刺激。脳天に来る味わいだ。水割り、オレンジジュース割(パスティス・オレンジ)も乙なものである。

 パスティス類であるペルノー(正確にはペルノーはパスティスではない)よりも香りはさわやかで、アルコールも強い。いかにもおフランス人が好きそうな味だ。彼の地では絶大な地位を誇る酒というのもなんとなく理解できる。

 この酒を造ったポール・リカールは、大もうけして、自分の名を冠したカーレースのサーキットまで作ってしまった。ジンやバーボンと肩を並べる売れ行きだというのだから、頷ける話だ。

 しかし、ペルノーと同じでやっぱり「歯磨き」「殺虫剤」の香りなんだな、これが。日本人はほとんど知らない酒なわけだが、やっぱり日本人には合わないよこりゃ。クサくて。

 といいながら、クイクイやっている自分。自分の周りだけ、南仏の夜がやってきている。